業務委託契約が下請法に該当すると、親事業者はいわゆる「下請法3条書面」を交付しなければなりません。
この下請法3条書面について、契約書作成専門の行政書士が解説します。

下請法の対象となる取引

下請法の対象となる取引は次の4つ。

1. 製造委託
2. 修理委託
3. 情報成果物委託
4. 役務提供委託

上記の取引を、親事業者が下請事業者に発注した場合3条書面の交付義務が発生します。

なぜ3条書面を交付しなければいけないのかというと、取引の公正化を図るため。
下請事業者は弱い立場に立たされることが多いため、3条書面を交付することにより、取引の透明化と公正化を図り、下請事業者の利益保護を守ることができるのです。

3条書面に記載すべき事項

3条書面に記載すべき具体的事項は次のとおり。

1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
2. 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
3. 下請事業者の給付の内容(委託の内容を明確に記載)
4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
5. 下請事業者の給付を受領する場所
6. 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
7. 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
8. 下請代金の支払期日(下請事業者から給付を受けた日から60日以内に支払う義務あり)

以下の事項は、該当する取引のみ記載。
該当しなければ記載の必要なし。

1. 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
2. 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
3. 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
4. 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法

名称、期日、業務の内容、代金の額、など極めて当たり前のことが必須記載事項になっているので、そこまで難しいものではないことがわかるかと思います。

3条書面の雛形

公正取引委員会が下請法3条書面のサンプルとして雛形を用意しています。

下請法3条書面サンプル
参考: https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/R1textbook.pdf

毎度3条書面を作成するのは実務上面倒なので、こちらの雛形を都度利用するのはありでしょう。
場合によっては「注文書」の文言を「発注書」に変える必要があるでしょう。

この雛形をベースに自社に使いやすいように改変するのもあり。

3条書面を交付しなかった場合の罰則

仮に3条書面を交付せず取引をした場合、50万円以下の罰金が課せられます(下請法第10条)。

おわりに

業務委託契約が下請法に該当するかどうかは、「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物委託」「役務提供委託」のどれかに該当し、発注事業者の資本金が一定額を超えていた場合です。

詳しくは業務委託契約と下請法の関係を記述した下記記事を参考にしてください。
参考: 業務委託契約に関係してくる代表的な法令

また、2024年11月1日からフリーランス新法が施行されるので、業務委託契約が下請法に該当しなくても、フリーランス新法の適用対象になる可能性があります。
フリーランスと取引する方はこちらも合わせてご確認ください。
参考: フリーランス新法と業務委託契約の関係や注意点を解説