令和6年11月1日からいわゆるフリーランス新法が施行されます。

フリーランス新法は、事業者とフリーランスが結ぶ契約に関係する法律なので、これにより企業側に対応が求められます。

本記事では、フリーランス新法の概要と、企業側がしなければならない対応を解説します。

フリーランス新法とは?

正式名称、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、と呼びますが、本記事では「フリーランス新法」と呼称します。

フリーランス新法とは、フリーランスが安心して働けるように、フリーランスと発注事業者の取引の健全化を図る法律です。

これにより、フリーランスに発注する発注事業者は以下の義務を負います。

・ 書面などによる取引条件の明示
・ 報酬支払い期日の設定・期日内の支払い(60日以内の支払い)
・ 募集情報の的確表示(広告等でフリーランスを募集する場合、虚偽表示や誤解をまねくような表示を行わない)
・ 育児介護等と業務の両立に対する配慮(マタハラの禁止)
・ 社内でハラスメント対策を整備する(ハラスメントによってフリーランスの業務を阻害するようなことがあってはならない)
・ 解除等の予告(契約解除をする場合30日前までに解除の予告をしなければならない)

書面による取引条件の明示は、具体的には以下事項が必須になります。

1. 業務委託事業者(発注者)と特定受託事業者(フリーランス)の名称
2. 業務委託をした日
3. 特定受託事業者(フリーランス)が行う業務内容
4. 納品する日または業務を履行する期日
5. どこに納品するかまたはどこで業務をするか
6. 業務の内容について検査する場合、検査を完了する期日
7. 報酬の額及び支払期日
8. 現金以外の方法で報酬を支払う場合、支払方法に関すること

※6と8は該当する取引のみ明示 

当たり前といえば当たり前の内容ですね。

以上が、フリーランス新法の概要と発注事業者が負う義務です。

発注事業者の禁止事項

さらに発注事業者は以下の禁止事項が定められています。

種類具体的内容
受領拒否受託者に帰責事由がないのに受託者の給付を拒むこと
報酬減額受託者に帰責事由がないのに受託者に支払う報酬を減額すること
返品受託者に帰責事由がないのに、その給付に係るものを引き取らせること(返品)
低廉な報酬相場に見合っていない著しく低い報酬額を定めること
強制購入・強制役務提供正当な理由がないのに受託者に自己の指定する物を強制して購入させる、または役務を強制して利用させること

発注者の優位的な立場を利用して、フリーランスからの給付を拒んだり、低い報酬を掲示したりするなどの行為を禁止しています。

当たり前と言えば当たり前ですね。
フリーランス新法の立法目的自体が、フリーランスが安心安全に働けるようにするためなのですから。

事業者とフリーランスの定義は?

ではそもそもフリーランスと事業者はどう定義するのでしょうか。

フリーランス新法では第二条でフリーランスと事業者を定義しています。
以下、その要約です。

フリーランスとは?
1. 従業員を使用しない個人
2. 従業員を使用しない1人社長(1人法人)

事業者とは?
1. 従業員を使用する個人
2. 従業員を使用する法人

従業員の有無で、事業者とフリーランスに分かれます。
従業員が1人でもいれば事業者。いなければフリーランスということです。

従って、フリーランス同士の取引でもフリーランス新法が適用される余地があります。
なぜなら、フリーランスでも従業員を雇っていれば、フリーランス新法では「事業者」という扱いになるからです。

フリーランス新法施行で必要になる企業の対応

令和6年11月1日以降は、フリーランスと取引をする場合はフリーランス新法に準じた契約をしなければなりません。

フリーランス新法の対象となる取引は、主に業務委託契約になるかと思います。
(例: Webメディア運営会社がフリーランスのライターに執筆依頼をする)

なので、企業側としてはフリーランス新法に抵触しないよう、要点をおさえて業務委託契約を締結する必要があります。
それらの要点については、本記事で紹介している通り、取引条件の明示や、報酬支払期日の設定・期日内の支払などです。

特に、支払い期日と解除予告は要注意でしょう。

繰り返しになりますが、フリーランス新法では支払い期日は60日までなので、60日以上の支払いサイトを設定している場合、それを60日以内に再設定しなければなりません。

解除予告も30日前にしなければいけないので、これに抵触する解除条項を設けてる場合は修正した方がいいでしょう。

それ以外はわりかし当たり前の事項を定めてるにすぎないので、そこまで特別な対応を迫られることはないでしょう。

下請法とフリーランス新法の違いは?

フリーランス新法に似てる法律に下請法があります。
下請法も事業者間の取引を守るための法律であり、フリーランス新法と共通する部分があります。

下請法は、親事業者と下請事業者の取引を規制する法律ですが、下請法は資本金の額で、親事業者と下請け事業者を定義しています。

例えば、物品の製造委託取引を行う場合、資本金3億円超が親事業者、資本金3億円以下が下請け事業者、あるいは資本金が1千万円超3億円以下が親事業者、資本金1千万円以下が下請事業者と定義されています。

対してフリーランス新法は、従業員の有無で立場を定義します。
つまり、下請法はお金、フリーランス新法はです。

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