契約書と覚書はどう違うかですが、結論から言えば法的に明確な定義はありません。
本記事では筆者の主観も多少入りますが、契約書と覚書の違いを解説します。
契約書と覚書の違いは?
多くの契約は契約書を締結しますが、法律上は契約は口頭でも成立します。
しかし、口頭で契約を締結すると言った言わないの揉め事になるので、「契約書」という証拠を残すことで不毛な紛争を防ごうとした結果、契約には契約書をまくのが一般的になったのです。
そして契約には契約自由の原則がありますので、契約書の形式には法的な決まりはありません。
なので、契約書の形式に関係なしに、それが覚書だろうと契約書だろうと、書いてある内容が全てです。
そのため、無理に契約書と覚書で区分けするのはあまり意味がないです。あくまでそこに書いてある内容が全てとなります。
覚書とは結局なんなの?
その前提で無理やり覚書の定義をするなら、覚書とは当事者間で締結した契約の内容を書き留めておく、メモや備忘録的なものです。
弁護士の牧野和夫著「初めての人のための契約書の実務」によれば、覚書は、契約が合意に至るまでの議事録として利用することを示しています。
契約は双方が様々な条件を擦り合わせて、何度も交渉してできるものです。
その交渉の過程や、合意内容を覚書として記録するわけです。
こうした覚書の使い方は実務上とても有益でしょう。
では契約書とは?
双方の契約内容をまとめた書式が「契約書」です。
契約書の形式に法的な定義はありませんし、そもそも契約を書面にする必要もありません。
例えば、メールやLINEのやり取りも契約の証拠になります。
契約当事者が特定され、具体的な記載と、具体的な合意内容があれば、それは契約の証拠になり得るのです。
覚書に法的拘束力は生じるか?
先ほど紹介した牧野先生の著作においては、覚書も法的拘束力を持つことを指し示しています。
覚書が法的拘束力を持つには、次の2つの条件が必要とのことです。
1. 記載が具体的であること
2. 当事者が法的拘束力を持つことを意図していること(具体的な拘束を書面で行った場合は法的拘束力を持つと解釈される可能性が高い)
覚書は単なるメモ書き程度の認識するのは危険であり、覚書でも内容次第では法的拘束力を持つため、注意するべきでしょう。
覚書にも印紙は必要
繰り返しになりますが、書かれている内容が全てであり、「契約書」であるか「覚書」であるかはあまり関係がありません。
なので、仮に覚書であろうと、書いてある内容が印紙税法上の課税文書に該当すれば、印紙は必要になります。
もし課税文書なのに印紙を貼らなかった場合、納付しなければならなかった3倍の過怠税が徴収されることになります。
ちなみに、仮に課税文書なのに印紙を貼ってなかったとしても書いてある内容の効力には関係ありません。
ただペナルティが課されるだけです。
おわりに
本記事で一番お伝えしたいことは、覚書も法的拘束力を持つ可能性があるということです。
メモ書きみたいなものだから大丈夫でしょ、と安易に考えてはいけません。
あくまでそこに書かれている内容を重視してください。
当行政書士事務所では契約書の作成を専門としていますので、こうした契約書のお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。