契約書とは別に、「念書」という文書が存在します。
行政書士の私が念書について、覚書や契約書との相違、そして念書の法的拘束力について解説します。

念書とは

念書とは法律用語でも、法的に定められた文書でもないので明確な定義があるわけではありません。
一般的には、念書とは、一方当事者の約束事などを後日の証拠や証明のために念のために書き写しておく文書です。

人は口頭でも約束しても、「そんな約束はしなかった」と言い逃れられるでしょう。なぜなら口頭だと録音でもしてない限り客観的な証明が難しいからです。

ですが、約束事をしっかり「念書」という形で文書にしたためておけば、念書が約束事の客観的な証明になり、相手にとってはプレッシャーになるため、約束事が当初通り履行される可能性が高くなるでしょう。

お金の貸し借りを例にすればわかりやすいですが、口頭のみで貸し借りが成立した場合と、貸し借りの約束を念書に書き記した場合だと、どう考えても後者の方がちゃんと貸したお金が返ってくる可能性は高いでしょう。

このように、約束事をしっかりと履行させるツールになり得るのが念書なのです。

念書は覚書や契約書とどう違うの?

では念書は覚書や契約書とどう違うのでしょうか。
一つずつ解説していきましょう。

念書と覚書の違い

覚書は、「おぼえがき」と読みます。
覚書も念書同様法律的な定義はありませんが、一般的には、当事者間で締結した契約の内容を書き留めておく、メモや備忘録的なものです。
(明確な定義があるわけではないので、あくまで当事務所の見解です)

実務上では覚書は、契約書を作る前段階の議事録的な使われ方、あるいは、予備的合意書として利用されることが多いです。

念書はどちらかといえば、個人間の約束事を文書にしたためるものですが、覚書は事業者間同士の意向のすり合わせに利用されるイメージですね。
参考: 契約書と覚書の違いとは?覚書の法的拘束力についても解説

念書と契約書との違い

契約書は双方の合意事項を法的に有効にするため、文書にまとめたものです。

例えば土地の売買契約。
土地の売買契約書には、売る目的物(土地)の特定、目的物の売値、所有権移転時期、契約解除事項、危険負担、契約不適合責任など、法的リスクを極限まで下げ、双方が納得できる合意事項を定めます。

そうすることで円滑な取引ができ、仮に紛争になったとしても、契約書が証拠になるので口頭での契約のような言った言わないの水掛け論に発展することはありません。

他方、念書はその性質上一方当事者の約束事を文書にしたためるものです。
例えば、「私は〇〇に借りた100万円を○月○日までに返済します」といった内容です。

そのため念書は、合意事項を定める契約書とは性質を異にするものと言えるでしょう。

念書に法的効力は認められるか?

契約自由の原則があるため、契約は文書にしなくても口頭でも成立します。

わかりやすい例でいうと、コンビニでパンを買うのも一種の売買契約です。
契約は申し込みと承諾で成立するので、パンをレジに持っていき代金を払い、店員がパンを袋に詰めて渡せば、それで売買契約が成立します。

しかし、高額な売買契約や、複雑な契約、あるいは契約が履行されないと不利益が大きい場合には口頭だと不安なので、契約書をまくという文化が発展したのです。

そのため、実は契約書には法律上定められた形式はなく、どういう書き方をしても、それが契約の合意事項であれば契約書になり得ます。

もちろん、その契約書が法的に認められるためには、法律的かつ具体的に合意事項を記載するべきです。

その前提で念書について勘案すると、念書とはいえ、約束事を具体的に書き、記載事項が民法90条で規定される公序良俗に反する内容でなければ、念書に法的効力が認められる可能性は高いでしょう。

念書の活用法

繰り返しになりますが、念書は当事者一方の約束事を文書にしたためるものです。

念書の効用を考えると、相手に約束事を履行させるためのプレッシャーとして使うのが有用と言えるでしょう。

例えば、あなたが友人に100万円貸すとします。
このとき、ちゃんと金銭消費貸借書を巻き、お金の貸し借りの証拠を契約書という形で残します。
さらに、契約書とは別に念書という形で100万円を必ず返す旨を書いてもらいます。

こうすることで、相手は契約書と念書という2つの証拠の存在と、2つのプレッシャーをかけられることになるので、この契約はないがしろにできないと思わせることができるでしょう。

以上のように、念書単体で使うというよりも、契約書の内容を確実に実行するための補強材料として念書を活用するという使い方です。

まとめ

まとめると、念書とは当事者一方の約束事を文書にするもので、内容によっては法的効力を持つ場合があります。

当行政書士事務所では念書の作成はお受けしてませんが、契約書の作成ならお任せください。
契約書関係で何かご相談があればお気軽にご連絡ください!