契約書や重要書類への押印は欠かせない行為です。
しかし、「捺印」と「押印」という言葉の違いを正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
これらの言葉は、どちらも印鑑を押す行為を指しますが、実は意味合いや法的効力に違いがあります。
この記事では、捺印と押印の違いを明確にし、ケース毎に適切な使い分けについて詳しく解説します。
捺印と押印の基本的な違い
捺印(なついん)とは、「署名捺印」の略であり、自筆で署名した後に印鑑を押す行為を指します。
署名と印鑑の両方によって、本人の意思を確認する意味合いがあります。
重要な契約書や書類など、本人の意思確認が特に重要な場面で用いられます。
対して押印(おういん)。
押印とは、「記名押印」の略であり、署名以外の方法(印刷、ゴム印など)で記名された後に印鑑を押す行為を指します。
記名と印鑑によって、書類の内容を確認・承認した意味合いがあります。
日常的な業務書類や、比較的軽微な内容の書類で用いられることが多いです。
捺印と押印の使い分け
一般的に、押印よりも捺印の方が法的効力が高いとされています。
その根拠法令としては民事訴訟法第228条と229条。
1. 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2. 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3. 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4. 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5. 第2項及び第3項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
民事訴訟法第228条
文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる。
民事訴訟法第229条
捺印は本人の自筆署名と印鑑の両方によって、より確実な本人確認が可能となるため、証拠能力が高いとされているのです。
そのため、重要な契約書や遺言書など、法的効力が重要な書類には捺印を用いるのが一般的と言えます。
捺印が推奨される契約(あくまで一例です)
・不動産売買契約書
・金銭消費貸借契約書
・遺言書
・会社の代表者が契約をするような重要な契約書
押印が推奨される場面(あくまで一例です)
・見積書
・請求書
・領収書
・社内稟議書
・日常的な業務で使われる書類
まとめると、重要な契約はなるべく捺印、そうじゃないものは押印というのが私の認識です。
まとめ
捺印と押印は、どちらも印鑑を押す行為を指しますが、意味合いや法的効力に違いがあります。重要な契約書や書類には捺印を、日常的な業務書類には押印を用いるなど、場面に応じて適切に使い分けることが重要です。
また、電子契約においても、電子署名と電子印鑑を適切に使い分けることで、安全かつ効率的な契約業務を実現できます。