契約書の日付は、契約書の締結日、自社や相手が押印する日を記載するのが一般的です。

ですが、実際に契約を締結したのが4月1日だけど、日付を遡って(いわゆるバックデート)3月1日と記載した場合どうなるのでしょうか?
契約書作成専門の行政書士が解説します。

契約書の日付はいつを記載すべき?

基本的に契約締結日は以下に設定することが多いです。

1. 契約期間が決まってる場合、その期間の開始日
2. 契約当事者全員が署名(記名)・押印した日

これは契約当事者で話し合いをして決めるべきでしょう。

なお、実務上契約締結日を空白にして後から書き加えるようにしているケースも見受けられますが、これはやめた方がいいでしょう。
なぜなら、相手方の都合の良い日付にされてしまい、こちらが予想していない不利益を被る可能性があるからです。

契約書のバックデートは避けた方がいいです

本記事の本題。
契約書の日付を実際に契約を締結した日から遡った日付にする、いわゆるバックデートについて。

仮に業務委託契約を4月1日に締結したのに、日付を3月1日にした場合、これはバックデートにあたります。
契約当事者同時が納得しているならバックデートは特に問題ないように思えますし、実際に契約書の効力自体には基本的に影響はありません。
ですが、契約書作成専門行政書士の立場としてはバックデートは避けた方がいいと言わざるを得ません。

理由は以下の2つ。

1. 契約管理に支障をきたす
2. 揉めたとき厄介

一つずつ解説します。

1. 契約管理に支障をきたす

先ほど説明したケースだと、本来契約締結日は4月1日なのに、日付を遡って3月1日に契約したことにしたとします。
しかし、これは実際の日付でない以上、実務上齟齬が生じ契約管理に支障をきたします。

なぜなら、例えば3月1日は会社の公休日で休みのはずなのに、契約書の日付が3月1日だと担当者からすれば「公休日なのになんで?」と困惑を招くことになります。
バックデートをした張本人が契約管理者であればいいですが、事情を知らない人が担当の場合無意味な混乱を生じさせるだけです。

さらに、このようなバックデートが1件だけならまだしも、何件もなされていて、半ば契約書のバックデートが常態化している場合、会社の契約管理はめちゃくちゃになります。
バックデートは実務上デメリットの方が大きいのです。

2. 揉めたとき厄介

「当事者同士で示し合わせてバックデートを決めたのだからいいじゃん」と思われるかもですが、それはそのとき当事者の足並みが揃っていただけの話です。

契約締結をしてしばらくしてから相手が心変わりして、「日付が間違っているからこの契約書の有効性に疑問がある」と言い出さないとも限りません。
あいにく、契約の世界に義理人情が介在する余地はなく、いつ紛争に発展するのかは誰にもわかりません。

そう考えると正確ではない日付を記載した契約書を作成するのはリスクでしかないのです。

契約書の効力発生日を過去に遡及させるには?

「だったら契約書の効力を過去に遡って適用させることはできないのか?」

結論、できます。
契約の効力を遡及させる条項を設ければいいのです。以下参照。

「本契約は、〇〇年〇月〇日に遡って適用する」

法律上、これは遡及効と呼ばれ、契約成立以前に遡って効力を発揮することを指します。

このような遡及効条項を設けるだけで契約の効力を遡らせて適用できるので、わざわざ契約管理が煩雑になるバックデートを行う本質的な意味はありません。

また、逆に契約の効力を過去ではなく未来に及ばせたい場合は以下の条項を設定するといいでしょう。

「本契約は、〇〇年〇月〇日から適用する」

確定日付を活用しよう

契約書の日付で揉めないように「確定日付」を活用する方法があります。

確定日付とは、その文言とおり変更できない確定した日付であり、確定日付が付与されると、その日にその文書が存在したことが公に証明されるので、日付で揉めることがなくなります。

確定日付は公証役場に請求し、公証人が締結された契約書に確定日付を押印することで、契約書に確定日付が付与されます。費用は700円なのでこれを活用しない手はありません。
日付が重要な意味をもつ契約、あるいは金額が大きい契約をするときは確定日付は非常に役立つ制度といえるでしょう。

当事務所では確定日付の取得を代行しています。
参考: 確定日付の取得を代行します

契約書の日付改竄は絶対にやめよう

契約書のバックデートはおすすめしないと書きましたが、契約書の日付の改竄はもってのほかです。絶対にやめましょう。

日付の改竄は、例えば契約書には4月1日と記載しているのに、これを契約当事者双方が合意して、日付を3月1日に書き換えるというもの。
この場合、民法第94条が適用され、通謀虚偽表示になり無効になります。

民法第94条(虚偽表示)
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

また、相手との合意ではなく、一方当事者が単独で勝手に日付を書き換えて改竄した場合は、私文書偽造の罪に問われる可能性があります。

日付の改竄は絶対にやってはだめです。

おわりに

本記事のまとめは以下。

まとめ
・ バックデートは原則禁止
・ バックデートを行うと契約管理がめちゃくちゃになる上に後の紛争の原因になる
・ バックデートより遡及効条項を設けた方がいい

当事務所は契約書作成専門の行政書士事務所ですので、契約書関係のことでお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。