撮影スタッフを外注する場合カメラマンとの業務委託契約書を作成する必要があります。

本記事では契約書作成専門の行政書士が、カメラマンと業務委託契約を結ぶ場合の作成ポイントや注意点などを解説していきます。

カメラマンとの撮影業務委託契約書の作成ポイント

カメラマンとの撮影業務委託契約書を作成する場合、契約の性質上、他の業務委託契約書と異なる注意点があったりします。
例えば撮影した写真の著作権の権利帰属はどうするか。
撮影する内容や範囲はどうするか。

それらを一つずつ見ていきましょう。

業務内容は明確に

カメラマンとの撮影業務委託契約書に限りませんが、業務内容は明確に記載するべきです。
なぜなら、明確に記載しないと、「指示された業務は契約書上どこにも記載がないので、できません」と言われてしまい、発注者としては困ったことになってしまうからです。

例えば以下の事項を正確に特定しておくべきでしょう。

撮影対象: 【例:商品名、イベント名、人物(氏名・属性)、場所など具体的な内容を記載】
撮影日時: 【例:2025年7月1日 10:00~17:00】
撮影場所: 【例:東京都渋谷区〇〇スタジオ】
納品物: 【例:JPEG形式データ〇〇点、〇〇×〇〇ピクセル、印刷用データなど具体的に記載】
納品方法: 【例:オンラインストレージ経由、DVD-R郵送など具体的に記載】
納品期日: 【例:撮影日より〇営業日以内】
その他特記事項: 【例:レタッチ作業の有無、特定の構図や雰囲気、使用機材の指定などがあれば記載】

業務委託契約でトラブルになるのは、契約書に記載されている業務内容が不明瞭であり、なんとなく当事者のふわっとした取り決めだけで契約している場合です。

関係性が良好なうちはそれでいいかもしれませんが、関係性が悪化したとき、雑な契約書を巻いていると大抵後悔します。
なので、業務内容は可能な限り細かく特定するべし。

報酬規定

お金の話。言うまでもなくとても大事です。

カメラマンとの撮影業務委託契約に関して言えば、撮影機材の費用や、撮影場所に行く際の交通費なども定めておきます。

特に撮影場所が遠方になる場合は交通費もそれなりの額になるので、誰が交通費を負担するかはしっかり取り決めておきましょう。

これは全ての業務委託契約書共通ですが、報酬を支払う際の振込手数料はどちらが負担するかも決めておきましょう。細かい話ですが揉める時は揉めます。
たかが数百円、されど数百円です。

著作権の権利帰属

カメラマンが撮影した写真データの著作権をどうするか。
法律上、カメラマンが撮影した写真の著作権及び著者人格権はカメランのものとなっています。

しかし、そもそも発注者は撮影を依頼しているのだから、著作権及び著者人格権をカメラマンに行使されたら勝手が悪くなります。

そこでカメラマンとの撮影業務委託契約書では下記のように、著作権を無償で譲渡すること、及び著者人格権を行使しないとを定めます。

第4条(著作権)
1. 本業務において乙が撮影・作成した写真およびその複製物に関する著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含む一切の権利)は、納品完了と同時に乙から甲に無償で譲渡されるものとする。
2. 乙は、甲に対し、本業務によって生じた著作物について、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権、公表権)を行使しないものとする。
3. 甲は、前項により譲渡された著作物を、Webサイトへの掲載、印刷物への使用、広告宣伝、SNS投稿など、目的を問わず自由に利用できるものとする。

カメラマンと揉めないように、報酬規定において、「当該報酬は著作権の無償譲渡分も含む」と記載しておくと、カメラマンに理解してもらいやすくなります。

なお、著作権法27条と28条の内容は以下のとおり。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

著作者の権利を定めた規定となっています。

著作権や肖像権を侵害してないことを確約する

カメラマンが撮影した写真が著作権や肖像権を侵害してないことを確約する条項は必ず設けておくべきです。
でないと、例えば、カメラマンが無断で他人の写真を自分で撮影したものとして納品してきた場合、責任の所在が曖昧になってしまいます。

ちなみに著作権の侵害はwebライターとの業務委託契約でも必ず盛り込むべき条項です。
ライターが誰かの記事をコピペして納品してくる危険性がありますからね。

不可抗力条項を定める

天変地異、戦争、ストライキの発生、双方のコントロールできない事象が発生した時に、双方の責任を免責するのが不可抗力条項です。

というのも、例えば高尾山の秋の紅葉を撮ってほしいという業務内容だったとして、東日本大震災レベルの震災が発生した場合、その中で撮影をこなすのは困難です。

しかし、不可抗力条項がないと、カメラマンはそれでも撮影をする義務を負います。
これはカメラマンにとって酷。

また、同じく大震災によって発注者の会社が大ダメージを受けてしまった場合、財政的な理由からカメラマンに報酬を支払うのが困難を要する場合があります。

そうした事象に備えて不可抗力条項を設けておくことで、大震災発生時には、債務不履行にならない旨を規定しておくのです。

サンプル条項は以下のとおり。

第◯条(不可抗力免責)
地震、台風、洪水等の自然災害、火災、戦争、テロ、暴動、感染症の蔓延、交通機関の運休、停電、通信障害、その他甲乙双方の責めに帰すことのできない事由により、撮影の実施が不可能または著しく困難となった場合、甲乙協議の上、日程変更または契約解除を決定するものとする。
この場合、いかなる当事者も相手方に対し、これにより生じた損害賠償請求を行うことはできないものとする。
ただし、既に発生している実費(交通費、宿泊費、スタジオ予約費用など)については、その状況に応じて、甲乙双方で協議し、負担割合を決定するものとする。

おわりに

YouTube撮影や、SNS運用、あるいはマッチングアプリのプロフィール写真撮影など、カメラマンの仕事の幅が広がっている昨今です。

だからこそ、正しく正確な撮影業務委託契約書を作成する必要があります。

当事務所はカメラマンとの撮影業務委託契約書の作成を請け負っていますので、契約書作成でお困りの際はぜひ弊所にご相談ください。