人は日常で多くの契約を交わします。

車を買うとき、銀行口座を開設するとき、雇用契約をするとき、世の中には契約ごとが溢れています。

そのとき、契約書を読み解く知識がないと不利な契約を結ばれてしまうリスクがあります。
本記事ではそうしたリスクを避けるために、契約書作成専門の行政書士が契約書で気をつけるべきポイントを解説します。

契約書で気をつけるべき4つのポイント

ざっくり、契約書で気をつけるべきポイントは次の4つです。

1. 契約の目的・範囲は明確か
2. 権利と義務は対等か
3. お金関係の条項
4. 契約期限

一つずつ解説します。

1. 契約の目的・範囲は明確か?

契約書に書いてある内容を法的に有効にするには、契約の目的や契約の範囲を明確にする必要があります。
曖昧な書き方どちらとでも取れるニュアンスの文言などは、こちらに不利な解釈をされてしまうリスクがあるので絶対NGです

例えば車の売買契約をするとしましょう。
その場合、どの車を売るのか(車種の特定)、誰に売るのか(相手方の特定)、いくらで売るのかいつ車を引き渡すのか支払い方法はどうするのか、などを細かくかつ具体的に記載します。

例えば車種を特定していないと、本当はA車を買いたかったのにB車を売りつけられてしまったなどのトラブルが考えられます。
引き渡し時期を定めないと、自分が希望する時期までに車を使用できないリスクがあります。

明確かつ具体的にそして細かく契約範囲を特定するのが、契約書で気をつけるべき大きなポイントの一つなのです。

契約内容に不明瞭な点がある場合は必ず相手方に確認するようにし、場合によっては修正を求めましょう。

2. 権利と義務は対等か

次に確認すべきポイントは、契約当事者双方の権利と義務が対等に定められているかどうかです。

契約書は、当事者双方の合意に基づいて作成されるものですが、必ずしも権利と義務が対等であるとは限りません。
というか、ファーストドラフトを相手方が作成した場合、大体ちょっとだけ相手に有利な内容になっています。

例えば、以下のようなケースには注意が必要です。

一方に有利な解除条項 (例:相手方には不利な条件でのみ解除可能、自社はいつでも自由に解除可能)
過剰な損害賠償責任 (例:自社の軽微なミスでも高額な損害賠償を請求される、相手方の責任は限定的)
一方的な契約内容の変更条項 (例:自社は自由に契約内容を変更できるが、相手方には認められない)

契約書全体を読み、一方の当事者にだけ有利な内容になっていないか、不当に不利な条項が含まれていないかを確認しましょう。もし不平等な条項があれば、修正削除を交渉する必要があるでしょう。

3. お金関係の条項

契約書は金銭が絡む部分条項こそ神経質になるべきでしょう。

確認すべきは以下。

・金額
・支払い時期
・支払い方法(銀行振込なのか、手渡しなのか)
・振込手数料は誰が負担するか(どちらが負担するか記載がないと揉める原因に)
・期限までに代金を支払えない場合の処置(契約解除になるのか、違約金を請求するかなど)

一見して振込手数料は金額も小さいしどどうでもいいように見えますが、私が契約書を作成する場合は必ず振込手数料はどちらが負担するか記載します。
理由は、小さい金額でも意外に揉めるから。

お互いがお互いに「相手が振込手数料を負担してくれるだろう」と考えている場合、それこそトラブルの種です。
金額も小さいので片方が折れて、「じゃあ私が振込手数料は負担します」と言ったとしても、この一つの出来事が不信感に繋がり、その後の契約に響く可能性があります。

たかが振込手数料、されど振込手数料です。

以下は、実際に私がWebライターの業務委託契約書を作った際の条項です。

第○条 報酬
1. 甲は、乙に対して、本件業務の対価として、1記事あたり〇〇円(消費税別)を支払う
2. 本件業務の難易度(文字数が多い、取材必須など)によって報酬は変動する。前項に定める報酬に変更がある場合は、甲乙協議の上定める。
3. 甲は、前項に定める報酬を納品後翌月末日までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は甲の負担とする

    契約書に振込手数料の記載がない場合は相手方に確認してみるといいでしょう。

    4. 契約期限

    最後は契約期限。
    当たり前ですが契約期限の確認は極めて重要です。
    確認すべきポイントは以下。

    ・契約がいつから有効になるか
    ・契約の期限はいつまでか
    ・期限前に契約を解除できるか
    (中途解約条項)
    ・自動更新条項はあるか
    (契約期限を迎えると、同じ条件で契約が自動更新される)

    中途解約条項は、皆さんが家を借りるときによく締結されることの多い条項です。
    契約期限が2年の賃貸借契約でも、1年程度住んでから突然転勤を言い渡されるかもしれません。
    その際、中途解約条項がないと、退去することができない、あるいは違約金が発生する可能性があります。

    なので、中途解約条項があるかどうかはいの一番に確認すべきでしょう。
    条項例としては次のとおりです。

    第〇条(中途解約)
    1. 甲及び乙は、本契約期間中といえども、相手方に対し〇か月前に書面にて予告することにより、本契約を解除することができる。
    2. 前項の規定により本契約が解除された場合、甲及び乙は、相手方に対し、損害賠償その他いかなる請求も行うことはできない。ただし、未払いの債務がある場合は、この限りではない。

    中途解約条項がない、あるいは中途解約条項があっても違約金が発生する場合もあるので、必ずチェックしましょう。

    不当な契約内容は無効になります

    例えば「本契約を中途解約した場合違約金として金1億円を支払う」などの法外な違約金条項が仮に設けられても、それは民法90条の公序良俗に反して無効になります(契約内容によっては1億円の違約金を正当化できる場合もありますが)。

    民法90条の条文は以下。

    第90条
    公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

    公序良俗とは、社会の一般的利益や道徳観念を指します。
    例えば、反社会的な行為などは当然に公序良俗に反するので、それらの法律行為は当然に無効になります。
    (例えば、殺し屋への暗殺依頼契約などは当然に無効)

    公平性に欠ける契約内容も公序良俗に反します

    それこそ、数万円程度の売買契約なのに、買い手が途中で購入をキャンセルした場合違約金1億円が発生するなどは、契約の公平性の観点からいって当たり前に無効です。

    なので、明らかに公平性に欠ける内容が契約書に盛り込まれているのに、知らずに契約してしまっても、民法90条により無効になる余地があるので、不安になったら弁護士さんに相談してみてください。

    おわりに

    契約自由の原則があるので、基本的に契約は双方の合意があれば成立することになっています。
    そこで、悪知恵が働く者は、巧妙に自分が得するような条項を設けて、不当に利益を搾取しようとしてきます。

    不要なトラブルを避けるためにも、本記事で上げた4つのポイントを重点的に確認するようにしてみてください。

    当行政書士事務所は契約書作成専門の事務所ですので、契約書関係でお悩みの方は是非ともご相談ください。
    ではでは。