2024年11月1日からフリーランス新法（正式名称：　特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律）が施行されます。

このフリーランス新法は業務委託契約に関係する法律なので、この法律を理解しておかないと知らずうちに誤った業務委託契約書を作成してしまうかもしれません。
そこで本記事ではフリーランス新法の概要と業務委託契約との関係について解説します。

フリーランス新法（特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律）の概要

フリーランス新法は、フリーランスの働き方を守るための法律です。
働き方の多様化によりフリーランスとして働く人が増えた結果、そのフリーランスたちが安心して働けるように保護する法律が必要になり、当該法律が誕生したという経緯です。

全26条からなる法律で、主にフリーランスとそのフリーランスに発注する事業者の取引を規定する内容です。

では、ここでいう「フリーランス」と「事業者」はどう定義するのでしょうか。

経済産業省が公表したガイドラインによればフリーランスとは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、 自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義しています。

フリーランス新法におけるフリーランスの定義もほぼ似たようなもので、特定受託事業者（フリーランス）とは、従業員を使用しない個人または法人をフリーランスと定義します。
自営業、あるいは1人社長がフリーランス新法におけるフリーランスということですね。

対して、特定業務委託事業者（発注者側）は、従業員を使用する個人または法人を指します。

以上のように、従業員の有無でフリーランス側か発注者側が分かれるのです。

発注者側（特定業務委託事業者）の義務

フリーランス新法により発注者側は主に次の義務を負います。

1.　書面などによる取引条件の明示
2.　報酬支払期日の設定・期日内の支払
3.　解除等の予告

書面で明示する事項は以下。

1.　業務委託事業者（発注者）と特定受託事業者（フリーランス）の名称
2.　業務委託をした日
3.　特定受託事業者（フリーランス）が行う業務内容
4.　納品する日または業務を履行する期日
5.　どこに納品するかまたはどこで業務をするか
6.　業務の内容について検査する場合、検査を完了する期日
7.　報酬の額及び支払期日
8.　現金以外の方法で報酬を支払う場合、支払方法に関すること
※6と8は該当する取引のみ明示　

報酬の支払時期については、フリーランスから給付を受けてから60日以内に支払う義務を負います。

解除等に関しては、継続的業務委託契約の場合、発注者側は解除をするときはフリーランスに対して30日前までには、解除の予告をしなければなりません。

発注者側の禁止行為

次に禁止行為。主に規定されているのは次のとおりです。

種類具体的内容
受領拒否受託者に帰責事由がないのに受託者の給付を拒むこと
報酬減額受託者に帰責事由がないのに受託者に支払う報酬を減額すること
返品受託者に帰責事由がないのに、その給付に係るものを引き取らせること（返品）
低廉な報酬相場に見合っていない著しく低い報酬額を定めること
強制購入・強制役務提供正当な理由がないのに受託者に自己の指定する物を強制して購入させる、または役務を強制して利用させること

下請法との違い

下請法（正式名称：　下請代金支払遅延防止法）とフリーランス新法は似ていますが着目しているポイントが違います。

下請法は、親事業者と下請事業者の取引を規制する法律という点でフリーランス新法と似ているのですが、下請法は資本金の額で、親事業者と下請け事業者を定義しています。

例えば、物品の製造委託取引を行う場合、資本金3億円超が親事業者、資本金3億円以下が下請け事業者、あるいは資本金が1千万円超3億円以下が親事業者、資本金1千万円以下が下請事業者と定義されています。

対してフリーランス新法は、従業員の有無で立場を定義します。
つまり、下請法はお金、フリーランス新法は人です。

フリーランス新法施行により業務委託契約の際に注意すべき点

前述のとおり、フリーランス新法は業務委託契約に関係する法律です。
したがって、フリーランスと業務委託契約を締結する場合当然にフリーランス新法が適用されることにご注意ください。

フリーランス新法に規定されている義務と禁止行為を踏まえた上で、一番気をつけるべきはやはり支払いサイト。

フリーランス新法第4条、「報酬の支払期日等」にて、発注者はフリーランスから業務の給付を受けた日から、60日以内に報酬の支払いを行わなければなりません。
なので、報酬の支払期日が60日を超過している場合、それは違法となります。

フリーランス新法の施行日は2024年の11月1日なのでまだ余裕はありますが、今のうちに契約管理をしておくべきでしょう。

おわりに

当行政書士事務所は契約書作成専門の事務所なので、業務委託契約書の作成、あるいは業務委託契約書のリーガルチェックも行っております。
当事務所にご依頼いただければ、下請法やフリーランス新法を踏まえた契約書を作成可能です。
ぜひともご依頼お待ちしております。