法律の条文や契約書の用語に「係る」という文言が散見されることがあります。
これは「かかる」と読むのですが、私は法律を勉強するまでの「係る」の意味がわかりませんでした。

というわけで本記事では「係る」の意味を解説します。

「係る」とは?

係るとはざっくりいうと、かかわる・関係するという意味です。
一応私は風営法が専門なので風営法で説明すると、風営法第31条には次のような条文があります。

第三十一条(標章のはり付け)
公安委員会は、前条第一項の規定により店舗型性風俗特殊営業の停止を命じたときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該命令に係る施設の出入口の見やすい場所に、内閣府令で定める様式の標章をはり付けるものとする。

上記の条文は、国家公安委員会が、店舗型性風俗特殊営業(ソープランド等)の営業の停止を命じる場合の規定です。
この命令が発された時は、この命令の対象となった店舗に関係する施設の出入り口に、特定の標章を貼り付けなければなりません。

当該命令に係る」という文言は、関係するの意味で用いられているので、命令対象店舗の関係する施設という意味ですね。

「かかる」とひらがなで表記されている場合

「係る」ではなくひらがなで「かかる」と表記されている場合もあります。
この場合意味が異なり、ひらがなの「かかる」は一般的に「前記の」という意味で使われています。

例に出すと、昭和31年の「鉱業権移転登録手続請求」の判例。

裁判要旨
 一 鉱業権の売買契約において、買主が排水探鉱の結果品質良好と認めたときは代金を支払い、品質不良と認めたときは代金を支払わない旨を約しても、右売買契約は、民法第一三四条にいわゆる条件が単に債務者の意思のみにかかる停止条件附法律行為とはいえない。
二 売買契約成立後貨幣価値が著しく変動しても、それだけで代金額が当然修正されるものと解すべきではない。
参考: https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57421

「債務者の意思のみにかかる停止条件附法律行為とはいえない」という文言の「かかる」は債務者の意思を指しています。

このように、「係る」と「かかる」では意味合いが異なるので、法律の文書を読むときは注意しましょう。

もちろん契約書を作成する場合は必ず「係る」と「かかる」は使い分けをするべきで、曖昧適当な使い方をすると、契約の相手方と見解の相違が発生するのでご注意ください。

おわりに

日本の法律の多くは戦前に作られたものです。
例えば民法は明治29年(1896年)に施行された法律ですので、めちゃくちゃ古い。

そのため、一般的にあまり使わないような表現や用語が見受けられるのです。
「係る」も昔の名残りとして現在も残っているのじゃないかなと思います。