契約書実務を行うと「公正証書」の作成を検討することもあるかもしれません。
何と言っても公正証書作成のメリットはその証拠能力の高さ。

本記事では公正証書を作成するメリットを、契約書作成専門の行政書士が解説します。

公正証書とは?

公正証書とは私人(一個人)からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する公文書。

公証人は厳密には公務員ではありませんが、国の公務である公証作用を担うため、実質的な公務員とみなされます。
そして公務員が作成する公文書には形式的証拠力が働くので、ゆえに公証人が作成する公正証書にも、明確な証拠能力を有するのが特徴です。

通常の契約書の場合は証拠能力があるかどうか争いになりますが、公正証書は公証人が証明力を担保しており、それが通常の契約書と公正証書の相違点。

さらに、公正証書を作成する際には公証人が本人確認書類の提出を求め、厳密に本人確認を行い、書類の内容に違法性がないかどうかまでしっかりチェックしますので、適法かつ誰が作成した契約書であるかもしっかり証明してくれます。

そうした公正証書の特性を鑑みると、重要な契約ほど公正証書で締結した方がいいということになります。

例に挙げると、金銭消費貸借契約、土地の売買契約など、高額な金銭が絡む契約ほど公正証書はうってつけでしょう。

裁判をしなくても強制執行が可能

公正証書を利用すると債権回収が容易になります。

例えばふつうに金銭消費貸借契約を結んだものの、貸したお金を借主が返してくれないケースを想定してみましょう。
この場合、貸主は債権回収を図るために訴訟提起、または民事調停手続きなどを通じて債権回収を試みる必要があります。

言うまでもなく訴訟となれば時間もお金もかかり面倒。

ところが、金銭消費貸借契約を公正証書で作成していた場合、訴訟を経ることなく強制執行の申し立てが可能となります。
訴訟提起が必要ないので弁護士費用なども発生せず。

もっとも、強制執行をするには条件がありそれが次の2つ。

1. 公正証書に記載された内容が、金銭の支払い等を目的とするものであること
2. 公正証書に債務者が強制執行に服する旨の内容が記載されていること
(これを執行認諾文言といいます)

根拠法令は民事執行法22条5号。

民事執行法第二十二条(債務名義)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
※条文一部省略

この執行力も公正証書を使う最大のメリットでしょう。
教師執行手続きの詳しい流れは下記参照。
参考: http://kousyouyakuba.net/ippankouseisyousyo/kyouseisikkou/

相手に圧をかけられるのも公正証書のメリット

通常の契約書ですと、相手がきちんと契約を履行してくれるかどうかわかりません。

しかし、公正証書は裁判の証拠として採用されるだけの圧倒的証明力を有しており、その事実だけで相手が軽々に契約破棄をするのをためらわせる効果があると言えるでしょう。

さらに、執行認諾文言(債務者が強制執行に服する旨の記述)を記載していれば、強制執行が可能になるので、この事実だけで相手にかなり圧をかけられます。

以上の公正証書の特性から、公正証書には相手に心理的な圧を与える効果が期待でき、必然的に契約がしっかり履行される確率が高まります。
これも公正証書ならではのメリット。

契約書を公正証書で作成するメリットまとめ

まとめると、契約書を公正証書で作成するメリットは次の3つ。

1. 【圧倒的信用力】
公正証書は形式的証拠力が働くので裁判の証拠として有用

2. 【強制執行ができる】
一定の条件を満たせば強制執行が可能

3. 【相手に圧を与えられる】
公正証書の高い証明力と強制執行が可能な点を考慮すると、契約の相手方には相当な圧を与えられる

繰り返しになりますが、大金が絡む重要な契約ほど公証制度は有益です。
国が用意したこの制度をぜひ使いこなしてみてください。