収入印紙は、印紙税という税金を納めるために契約書などの課税文書に貼り付けるものです。業務委託契約書も、契約金額によっては収入印紙が必要となる場合があります。
もし収入印紙の貼り付けを怠ったり、金額を間違ってしまうと、過怠税が科されます。
この記事では、業務委託契約書に貼る収入印紙について、種類、金額、正しい貼り方、割印の方法まで、図解を用いてわかりやすく徹底解説します。
この記事を読めば、
- 業務委託契約書における収入印紙の基礎知識が身につく
- 契約金額に応じた収入印紙の金額がわかる
- 収入印紙の正しい貼り方・割印の方法がマスターできる
- 収入印紙に関する疑問や不安を解消できる
ぜひ最後までお読みいただき、業務委託契約書の収入印紙に関する知識を深めていただければと思います。
業務委託契約書に収入印紙は必要? 課税文書と非課税文書
結論、業務委託契約書に収入印紙の要否は、契約内容と契約金額によって決まります。
収入印紙が必要となるのは、印紙税法で定められた「課税文書」に該当する場合のみです。
業務委託契約書が課税文書に該当するかどうかは、主に以下の2つのポイントで判断します。
- 契約内容: 業務委託契約の内容が、印紙税法上の課税対象となる取引に該当するかどうか
- 契約金額: 契約金額が1万円以上かどうか
業務委託契約書が課税文書となるケース
業務委託契約書が課税文書となる代表的なケースは、以下の2号文書に該当する場合です。
2号文書:請負に関する契約書
- 該当する契約内容の例:
- 物品の製造委託
- ソフトウェア開発委託
- 建設工事委託
- 運送委託
- 清掃委託
- 警備委託
- 情報処理委託
- 広告委託
- デザイン制作委託
- コンサルティング業務委託 (業務内容によっては非課税となる場合あり。後述)
ポイント: **「請負」**とは、当事者の一方がある仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約をいいます。業務委託契約の内容が「仕事の完成」を目的とする場合は、請負契約とみなされ、2号文書に該当する可能性が高くなります。
業務委託契約書が非課税文書となるケース
以下のケースに該当する場合は、業務委託契約書は非課税文書となり、収入印紙は不要です。
- 契約金額が1万円未満の場合
- 業務委託契約書に記載された契約金額が1万円未満の場合は、収入印紙は不要です。
- 契約金額の記載がない場合も、原則として非課税となります。(ただし、後日、契約金額が1万円以上であることが判明した場合は、遡って印紙税が課税される可能性があります)
- 委任契約とみなされる場合
- 業務委託契約の内容が、**「法律行為に関する事務の委任」または「準委任」**に該当する場合は、課税文書に該当せず、収入印紙は不要です。
- 委任契約、準委任契約とは?
- 委任契約: 法律行為に関する事務処理を委託する契約 (例:弁護士への訴訟代理委任、税理士への税務申告委任など)
- 準委任契約: 法律行為以外の事務処理を委託する契約 (例:医師への診療委託、コンサルタントへの経営コンサルティング委託など)
- ポイント: **「委任」「準委任」契約は、「仕事の完成」ではなく、「一定の事務処理」**を目的とする契約です。業務委託契約の内容が、成果物の完成を目的とせず、業務の遂行自体に重点が置かれている場合は、委任契約または準委任契約とみなされ、非課税となる場合があります。
- 非課税となる可能性のある業務委託契約の例:
- 法律顧問契約
- 税務顧問契約
- 経営コンサルティング契約 (成果報酬型ではなく、時間報酬型の場合など)
- 顧問契約 (法律、税務、経営以外の専門知識やアドバイスを提供する顧問契約)
注意点: 業務委託契約が「請負契約」と「委任契約/準委任契約」のどちらに該当するかは、契約書の内容を総合的に判断する必要があります。判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家にご相談ください。
業務委託契約書の収入印紙の金額はいくら?【契約金額別】
業務委託契約書が課税文書(2号文書)に該当する場合、契約金額に応じて収入印紙の金額が決まります。
2号文書(請負に関する契約書)の印紙税額
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上 100万円以下 | 200円 |
100万円超 200万円以下 | 400円 |
200万円超 300万円以下 | 1,000円 |
300万円超 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超 1千万円以下 | 1万円 |
1千万円超 5千万円以下 | 2万円 |
5千万円超 1億円以下 | 6万円 |
1億円超 5億円以下 | 10万円 |
5億円超 10億円以下 | 20万円 |
10億円超 50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
ポイント:
- 契約金額の記載がある場合: 契約書に記載された契約金額に応じた印紙税額となります。
- 契約金額の記載がない場合: 一律200円の印紙税額となります。ただし、後日、契約金額が1万円以上であることが判明した場合は、差額分の印紙税を追納する必要があります。
- 契約金額と印紙税額の対応表 を上記の表で必ず確認しましょう。
業務委託契約書の収入印紙の貼り方と割印の方法【図解】
収入印紙の貼り方、割印の方法を間違えると、印紙税を納めたことにならない場合があります。正しい貼り方と割印の方法を、図解で確認しましょう。
収入印紙の貼り方【3つのステップ】
ステップ1:収入印紙を用意する
- 契約金額に応じた金額の収入印紙を郵便局やコンビニエンスストアなどで購入します。
- 間違った金額の収入印紙を購入しないように注意しましょう。
ステップ2:契約書に収入印紙を貼り付ける
- 収入印紙を契約書の課税文書とみなされる箇所 (契約書の表紙や裏表紙、契約条項が記載されたページなど) に貼り付けます。
- 収入印紙は、糊でしっかりと貼り付けましょう。剥がれないように注意が必要です。
- 収入印紙を複数枚貼り付ける場合は、重ならないように、隣り合わせに貼り付けます。
ステップ3:割印(消印)をする
- 収入印紙と契約書両方にまたがるように、割印 (消印) を押します。
- 割印は、印章 (印鑑) または署名で行います。
- 印章 (印鑑) を使用する場合:
- 契約当事者の印章 (契約書に押印したものと同じ印章である必要はありません)
- 代表者印、社印、個人印など、どの印章を使用しても問題ありません。
- シャチハタやゴム印など、インク浸透印は使用できません。必ず朱肉を使う印章を使用してください。
- 署名で行う場合:
- 契約当事者の署名 (自筆で署名する必要があります)
- ボールペンや万年筆など、消えない筆記具で署名します。
ポイント:割印(消印)はなぜ必要?
割印 (消印) は、収入印紙の再利用を防ぐために行います。割印がない場合、収入印紙を貼り付けただけでは印紙税を納めたことにはなりません。
必ず割印を行ってください。
業務委託契約書の収入印紙に関する注意点
業務委託契約書の収入印紙に関しては、以下の点に注意が必要です。
- コピー(写し)には収入印紙は不要
- 業務委託契約書の原本のみが課税文書となります。コピー (写し) に収入印紙を貼り付ける必要はありません。
- ただし、コピーを原本として使用する場合 (例:コピーに「原本と相違ない」旨の証明文を記載し、署名・捺印した場合) は、そのコピーが課税文書とみなされ、収入印紙が必要となる場合があります。
- PDFなどの電子契約書には収入印紙は不要
- PDFなどの電子データで作成された電子契約書は、書面の契約書ではないため、課税文書に該当しません。したがって、電子契約書には収入印紙を貼り付ける必要はありません。
- 電子契約を導入することで、印紙税や契約書作成・郵送コストを削減できます。
- 収入印紙を貼り忘れた場合・金額が不足していた場合
- 収入印紙の貼り付けを忘れたり、金額が不足していた場合は、過怠税が課せられます。
- 過怠税の金額は、本来納付すべき印紙税額の2倍 (自主的に不納付を申し出た場合は1.1倍に軽減) となります。
- 収入印紙の貼り忘れ、金額不足に気づいたら、税務署に自主的に申告し、指示に従って適切な手続きを行いましょう。
- 間違って収入印紙を貼り付けてしまった場合
- 間違って収入印紙を貼り付けてしまった場合は、税務署で還付の手続きを行うことができます。
- 還付を受けるためには、誤って貼り付けた収入印紙が未使用であること、税務署に申請書を提出することなどの条件があります。
まとめ:業務委託契約書の収入印紙は正しく理解し、適切に対応しましょう
業務委託契約書の収入印紙について、種類、金額、貼り方、割印の方法、注意点などを詳しく解説しました。
この記事のポイントをまとめると以下の通りです。
- 業務委託契約書は、契約内容と契約金額によっては収入印紙が必要な課税文書となる場合がある
- 課税文書となるのは、主に**「請負に関する契約書 (2号文書)」** に該当する場合 (例:物品製造委託、システム開発委託など)
- 契約金額が1万円未満の場合や、委任契約/準委任契約とみなされる場合は非課税
- 収入印紙の金額は、契約金額によって異なる (契約金額別印紙税額一覧表を確認)
- 収入印紙は正しい方法で貼り付け、割印 (消印) を必ず行う
- 電子契約書には収入印紙は不要
業務委託契約書の収入印紙について正しく理解し、適切な対応ができるようにしましょう。