2020年4月1日の民法改正により、業務委託契約の再委託に関する規定が新設されました。
というわけで本記事では知ってるようで知らない業務委託契約における、再委託の可否について解説します。
業務委託契約は2種類ある
そもそも民法上「業務委託」という言葉はありません。
民法の定義によれば、「請負」と「委任(準委任)」が業務委託契約になります。
なので、あなたが業務委託契約を締結する場合は、請負か委任のどちらかということになります。
違いを民法の条文で確認してみましょう。
民法第632条(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法第643条(委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
請負契約は例えば、建設工事や運送契約などが当てはまります。
委任契約は法律行為の事務なので、行政書士への許認可の依頼や、弁護士への裁判の依頼などが委任に当てはまります。
また、民法第656条で「準委任」が規定されており、法律事務以外の委任が準委任になります。
具体例でいうと、医者の手術などが準委任に該当します。
とはいえ、これだけでは請負と委任の明確な違いがわかりづらいかと思います。
雑に言えば、請負契約は仕事の完成義務を負っていますが、委任契約は仕事の完成義務を負わない代わりに、仕事をしっかりやるという善管注意義務を負います。
例えば、弁護士は依頼人から請け負った裁判を必ず勝つ義務は負っていませんが、勝つために全力を尽くすという義務は負っているということです。
委任と請負の詳細な違いについては下記記事を参考にしてください。
参考: 業務委託契約書の「請負」と「委任」の違いを解説
なぜ請負と委任の解説をしたかというと、再委託のルールが請負と委任で異なるからです。
再委託のルール
まず請負契約については再委託について何ら規定はありません。
したがって、請負契約で業務を請け負った者は、自由に業務を他の者に再委託することが可能となっています。
他方、委任契約は再委託に関するルールがあります。
第644条の2【復受任者の選任等】
一受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
二代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。
委任者(依頼人)の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときにのみ、再委託が可能となっています。
やむを得ない事由とは、突然の怪我等で業務を遂行できない場合などです。
なのでまとめると、請負契約は再委託は自由、委任契約は一定の条件の下再委託が可能となっています。
再委託には条件を付けよう
請負契約は自由に再委託ができるわけですが、発注者側からすれば、請負人の能力や特性を信頼して業務を発注したのに、全く別の人間に再委託されるのは不安でしょう。
そこで、業務委託契約の実務上、大体以下の再委託を制限する条項を設けるのが一般的です。
第〇〇条 再委託の禁止
請負人は、本件業務の全部又は一部を第三者に委託することができない。ただし、発注者及び請負人が協議のうえ発注者が書面による承諾をした場合には、この限りではない。
一律に再委託を禁止してもいいのですが、業務の特性や、状況が変化する可能性を考慮して、協議により再委託を認める条項です。
こうすることで発注者は勝手に再委託されるリスクを回避することができ、かつ必要であれば再委託を許可できるという柔軟さが確保されます。
また、委任のルールに則り次のような条項でもありでしょう。
第〇〇条 再委託について
請負人は、次の事由が発生したときは、業務の全部又は一部を第三者に委託することができる。
(1)病気、怪我、事故、その他重大な事由が生じて業務の遂行に支障をきたす場合
(2)発注者が書面で再委託を許諾したとき
また、再委託された第三者の仕事に責任をもってもらうため、次のような保険をかけておくべきです。
請負人は前項の発注者の事前の書面による承諾を得た場合でも、本契約に定められた請負人の義務と 同等の義務を課するものとし、当該第三者への委託により本契約又は個別契約に定める義務の履行を免れるものではない。
これで再委託先にいい加減な仕事をされるリスクが減ります。
おわりに
あまり知られていない業務委託契約の再委託のルール。
当行政書士事務所では業務委託契約書の作成を請け負っていますので、業務委託契約の締結をお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。