借用書は正式には消費貸借契約と呼ばれ、ほとんどが金銭の貸し借りを規定した金銭消費貸借契約です。
本記事では借用書の作成方法を行政書士の私が解説します。
雛形も用意しているので、必要な方はそこからダウンロードしてお使いください。

前述した通り、借用書は消費貸借契約と呼ばれ、一方が相手型に金銭その他の物を交付し、これを受け取った相手方が、種類品質及び数量の同じ物を返還することを約束する契約です(民法587条)。

多くが金銭の貸し借りで利用されるため、契約書のタイトルは「金銭消費貸借契約」と記されることが一般的です。

借用書のテンプレート・雛形

借用書のテンプレートを作成しましたので必要な方はこちらからダウンロードしてください。

【Word】金銭消費貸借契約書

個人間の金銭の貸し借り、連帯保証人あり、利息を取る場合を想定して作成しました。
必要に応じて条項を削除あるいは追加したりして使ってください。
この借用書の雛形の利用は自己責任でお願いします。

借用書コピペ用

コピペ用に条項を全て掲載しておきます。

金銭消費貸借契約書

○○○○(以下「貸主」という)、○○○○(以下「借主」という)及び○○○○(以下連帯保証人という)は、次の通とおり金銭消費貸借契約(以下「本件契約」という)を締結する。

第1条(金銭消費貸借)
貸主は、借主に、本日、金○○○円(以下「本件貸付金」という)を貸し渡し、借主はこれを受領した。

第2条(貸付条件等)
本件貸付金の貸付条件は、次のとおりとする。
(1) 弁済期限     ○年○月○日
(2) 利率       年○%(年365日の日割り計算)
(3) 利息支払い期限  弁済期限に元金と一括して払う
(4) 遅延損害金    年○%(年365日の日割り計算)

第3条(返済方法)
借主は、貸主に対して、前条1号の期限までに、本件貸付金及び前条2号の利息金を、貸主が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。なお、振り込み手数料は借主が負担する。
【銀行口座】
銀行    ○○銀行○○支店
預金種類  普通
口座番号  □□□□
口座名義  〇〇〇〇

第4条(連帯保証)
連帯保証人は、借主が貸主に対して負う一切の債務に対して、借主に連帯して保証する。

第5条(期限の利益の喪失)
借主又は連帯保証人について、次の各号の事由が一つでも生じた場合には、何らの通知催告等なくして当然に、借主及び連帯保証人は、貸主に対する一切の債務について期限の利益を失い、直ちに当該債務を弁済しなければならない。
(1) 本契約に一つにでも違反したとき
(2) 差押、仮差押、仮処分、強制執行、担保権の実行としての競売、租税滞納処分、その他これらに準じる手続きが開始されたとき
(3) 貸主に対する詐術その他背信的行為があったとき
(4) その他、貸主との信頼関係が破壊される重大な事由が生じたとき

第6条(報告義務)
借主及び連帯保証人は、次の各号の事由が生じた場合は、直ちに貸主に書面で通知しなければならない。
(1) 住所の移転
(2) 職業、勤務先の変更
(3) 電話番号等の連絡先の変更

第7条(公正証書の作成)
借主は、貸主の請求があるときは、直ちに、本契約と同一の約定による執行認諾文言付公正証書を作成するための必要な手続きをとることとする。なお、当該手続きに関する費用は、借主が負担する。

第8条(専属的合意管轄)
本件契約等に関して生じた一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第9条(協議解決)
本件契約等に定めのない事項及び本件契約等の内容の解釈に関して疑義が生じたときは、貸主、借主、連帯保証人、で誠実に協議の上解決するものとする。

以上、本件契約等の締結の証として、本件契約書を3通作成し、貸主、借主、連帯保証人が、署名又は記名及び押印の上、格1通を保有する。

○○年○○月○○日

貸主

借主

連帯保証人

消費貸借契約書(借用書)の条項を解説

私が作成した借用書(消費貸借契約書)は、全9条からなるものです。
これらの条項一つ一つの意味や効果を解説します。

表題・前文

本契約書の表題と前文です。

金銭消費貸借契約書

○○○○(以下「貸主」という)、○○○○(以下「借主」という)及び○○○○(以下連帯保証人という)は、次の通とおり金銭消費貸借契約(以下「本件契約」という)を締結する。

表題は「金銭消費貸借契約書」としています。
法律上は契約書は内容で評価されるため、表題をどう書いても問題はないのですが、当事者同士で認識の齟齬が発生する可能性を考えると、内容に合致した表題にするべきでしょう。

なのでここではわかりやすく「金銭消費貸借契約書」としています。

契約書の前文は以下の2つはほぼ必須事項です。

・誰と誰の合意か
・契約の目的・要旨

なので、「貸主」「借主」「連帯保証人」の金銭消費貸借契約であることを端的に記載した前文となっています。
場合によっては、「甲・乙」などの略称を使っても構いません。

第1条 金銭消費貸借

第1条(金銭消費貸借)
貸主は、借主に、本日、金○○○円(以下「本件貸付金」という)を貸し渡し、借主はこれを受領した。

シンプルに貸主が借主にいくら貸したかを記載した条項となっています。
借主に「お金なんか借りてない!」という言い逃れをさせないため、「借主はこれを受領した」と記載しています。

人によってはこの1条の中に、貸付条件等も一緒に記載する人もいますが、私は見やすさを考慮してあえて分けています。

第2条 貸付条件等

第2条(貸付条件等)
本件貸付金の貸付条件は、次のとおりとする。
(1) 弁済期限     ○年○月○日
(2) 利率       年○%(年365日の日割り計算)
(3) 利息支払い期限  弁済期限に元金と一括して払う
(4) 遅延損害金    年○%(年365日の日割り計算)

弁済期限、利率、利息支払い期限、遅延損害金の4つの貸付条件等を規定しています。
利息を取らない場合や、遅延損害金も規定しない場合は対象文言を削除してください。

第3条 返済方法

第3条(返済方法)
借主は、貸主に対して、前条1号の期限までに、本件貸付金及び前条2号の利息金を、貸主が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は借主が負担する。
【銀行口座】
銀行    ○○銀行○○支店
預金種類  普通
口座番号  □□□□
口座名義  〇〇〇〇

銀行口座に振り込む方法により返済する旨を規定した条項です。
ここでのポイントは、振込手数料は誰が負担するかをしっかり規定しておくことです。
振込手数料の負担を規定しないと、後に貸主と借主どちらが負担するかで紛争になる可能性があります。

第4条 連帯保証

第4条(連帯保証)
連帯保証人は、借主が貸主に対して負う一切の債務に対して、借主に連帯して保証する。

ほとんどの契約は口頭でも成立しますが、保証契約は書面でしなければ効力がないため(民法446条2項)、連帯保証の条項を設けています。

ちなみに債務者(この場合借主)が保証人を立てる義務を負う場合、その保証人は、「行為能力者」で「弁済する資力を有していること」の2つが必要となります(民法450条1項)。

行為能力者とは、契約などの法律行為を単独で行うことができる者を指します。
具体的には、未成年者や被成年後見人のような単独で法律行為を行うことができない者は、行為能力者にはなり得ないということです。

第5条 期限の利益の喪失

第5条(期限の利益の喪失)
借主又は連帯保証人について、次の各号の事由が一つでも生じた場合には、何らの通知催告等なくして当然に、借主及び連帯保証人は、貸主に対する一切の債務について期限の利益を失い、直ちに当該債務を弁済しなければならない。
(1) 本契約に一つにでも違反したとき
(2) 差押、仮差押、仮処分、強制執行、担保権の実行としての競売、租税滞納処分、その他これらに準じる手続きが開始されたとき
(3) 貸主に対する詐術その他背信的行為があったとき
(4) その他、貸主との信頼関係が破壊される重大な事由が生じたとき

期限の利益とは、「弁済期限までは返済しなくてよい」という借主の利益を指します。
すなわち、期限の利益が喪失した場合、借主は弁済期限に関係なく直ちに当該債務を弁済しなければなりません。

民法は期限の利益の喪失について以下を規定しています。

第137条【期限の利益の喪失】
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

ですが、民法に規定されている事由以外も挙げて期限の利益喪失条項を設けるのが一般的なので、私の契約書もそれに準じました。

第6条 報告義務

第6条(報告義務)
借主及び連帯保証人は、次の各号の事由が生じた場合は、直ちに貸主に書面で通知しなければならない。
(1) 住所の移転
(2) 職業、勤務先の変更
(3) 電話番号等の連絡先の変更

貸主からすれば、借主の住所や職場又は連絡先などが変更されたら不安なので、それらの変更自由が生じた場合は報告するよう義務付けた条項です。

第7条 公正証書の作成

第7条(公正証書の作成)
借主は、貸主の請求があるときは、直ちに、本契約と同一の約定による執行認諾文言付公正証書を作成するための必要な手続きをとることとする。なお、当該手続きに関する費用は、借主が負担する。

借主が契約に違反し債務を弁済しない場合、訴訟を提起して強制執行を行うための判決を得る必要があります。ですが、訴訟提起は時間もお金もかかるため、執行認諾文言付公正証書を作成する旨を規定しておくのです。

執行認諾文言付公正証書があれば訴訟手続きを得ないでも強制執行が可能になります。

参考: https://www.moj.go.jp/MINJI/1-1-1-2-2-3.html

第8条 専属的合意管轄

第8条(専属的合意管轄)
本件契約等に関して生じた一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

ほとんどの契約書において設けられている条項です。

民事裁判になると、当事者の合意がない場合、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所で争うことになります。これが法定管轄と呼ばれるものですが、これだと被告の普通裁判籍が遠方だと面倒です。
なので、最初から自分の所在が近い裁判所を合意管轄にしておくと移動などの手間がかからなくなります。

第9条 協議解決

第9条(協議解決)
本件契約等に定めのない事項及び本件契約等の内容の解釈に関して疑義が生じたときは、貸主、借主、連帯保証人、で誠実に協議の上解決するものとする。

これも多くの契約書に設けられるいわゆる「協議解決条項」です。

しかし、協議解決条項は法律的には何の意味もないので別に設ける必要はありません。
なんでもかんでも訴訟で決着をつけるのは手間とコストがかかるため、極力話し合いで解決するのが望ましいため、私は便宜的に協議解決条項を設けました。

後文

以上、本件契約等の締結の証として、本件契約書を3通作成し、貸主、借主、連帯保証人が、署名又は記名及び押印の上、格1通を保有する。

○○年○○月○○日

貸主

借主

連帯保証人

通常の契約書のフォーマットです。
貸主、借主、連帯保証人の欄には、それぞれの氏名を署名し住所を記載し、そして押印します。

その他設けた方がいい条項

私が作成した借用書は必要最低限の条項だけのシンプルな契約書になっています。
場合によっては追加を検討した方がいい条項もあるでしょう。
それを紹介します。

1. 反社会的勢力排除条項

反社会勢力や暴力団などと契約を交わすのはリスクのため、多くの契約書に反社会勢力排除条項を設けています。
重要度はそんなに高くないですが、場合によっては検討していいでしょう。

2. 機密保持条項

金銭の貸し借りを他人に知られたくない場合もあります。
そんなときのために機密保持条項を設けておけば、契約内容を外部に漏らすことに制限をかけられるので有益です。

雛形・テンプレートを使う場合の注意点

雛形・テンプレートを使うのは自己責任でお願いします。
契約内容は千差万別なので、同じ金銭消費貸借契約だとしても、当事者によって内容は異なります。

オーダーメイドで作って欲しい場合は、当事務所までご連絡ください。