本記事では業務委託契約書に中途解除条項を設けるメリットを解説します。
結論からいうと、業務委託契約書に中途解除条項を設けると次のようなメリットがあります。
・トラブル発生時、取引を打ち切ることができる
・こちらの都合で契約を解除できる
では具体的にみていきましょう。
中途解除条項の例文
以下は私がよく業務委託契約書の使う中途解除条項です。
第○条(中途解除)
1. 委託者又は受託者は、相手方に1ヶ月前までに書面をもって通知することにより、本契約を解除することができる。なお、委託者は、解除により受託者に損害が生じた場合でも、その賠償責任を負わない。
2. 委託者又は受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、催告その他の手続きを要しないで、直ちに本契約を解除することができる。
(1) 本契約に定められた条項に違反したとき
(2) 本契約に定められた債務の履行をしないとき、又は債務の履行が困難であることが明らかなとき
(3) 相手方に対する詐術その他背信的行為があったとき
前項の場合、本契約を解除された当事者は、解除した当事者が解除により被った損害の一切を賠償するものとする。
1項では、一ヶ月前に通知することにより、無条件で契約解除を設ける旨を設定しています。
これにより、当事者の都合で契約を解除できるので非常に都合がいいです。
他方、相手にも同様の解除権を認めているので、こちらが解除をしたくない時でも相手に解除権を行使される可能性があります。
それを避けるためには、次のように自分のみが解除権を有する条項に変えるのも一つの手です。
甲は、乙に1ヶ月前までに書面をもって通知することにより、本契約を解除することができる。なお、甲は、解除により乙に損害が生じた場合でも、その賠償責任を負わない。
2項では無催告解除要件を定めています。
無催告解除とは、要は解除することを予告せずに契約を打ち切ることができる権利です。
非常に強力な権利なので、要件を相手の契約違反や背信行為があった場合に限定しています。
業務委託契約で中途解除条項を設けるメリット
冒頭でも書いたとおり、中途解除条項を設けるメリットは次の2つでしょう。
・こちらの都合で契約を解除できる
・トラブル発生時、取引を打ち切ることができる
1. こちらの都合で契約を解除できる
契約を締結した後、状況の変動により、相手方と取引を継続するのが望ましくない場合もあります。
そうした時に、ダラダラ契約関係を維持するより、すっぱり中途解除できる方が双方にとってメリットがあります。
2. トラブル発生時、取引を打ち切ることができる
相手が契約の信義に反する行為をしたのに、契約を継続する理由は少ないでしょう。
その場合すっぱり取引を打ち切れるよう、中途解除条項を定めておけば安心です。
ちなみに民法では一定の事由があれば無催告解除をすることができます。
以下が無催告解除の要件を規定する民法の条文です。
民法第542条
1.次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2.次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
相手が債務の履行をできない、あるいは履行拒絶の意思を明確にした場合など、一定の要件があれば特に契約書に定めていなくても契約を解除できます。
覚えておいて損はないでしょう。
中途解除条項に盛り込むべき内容
中途解除条項を設ける場合、盛り込むべき内容があります。
それが以下。
・解除権を有する者は誰か?
・損害賠償(違約金)の有無
・中途解除の条件
・報酬額の取り扱い
一つずつ解説します。
解除権を有する者は誰か
解除権を有する者が誰かは明確に明記しましょう。
私が作った条項では、委託者及び受託者双方に解除権を認めています。
委託者又は受託者は、相手方に1ヶ月前までに書面をもって通知することにより、本契約を解除することができる。
双方が解除権を持つ以上、双方が途中で契約解除させるリスクを背負います。
なので、自分だけが解除権を有する形にしたい場合以下のように条項を書き換えるといいでしょう。
委託者は、相手方に1ヶ月前までに書面をもって通知することにより、本契約を解除することができる。
これで非常に自分にとって有利な内容となります。
損害賠償(違約金)の有無
いわゆる違約金について。
途中で契約を打ち切る以上、相手に損害が発生する場合があり、その場合の違約金をどうするかという問題です。
私が作った中途解除条項では相手の損害の一切を賠償する義務を負う内容にしています。
本契約を解除された当事者は、解除した当事者が解除により被った損害の一切を賠償するものとする。
ですが、これだと損害額が桁違いの額になる可能性もある上に、実際の損害額の算定が難しかったり、相手に高額の賠償請求をされるリスクを孕みます。
そこで、賠償額を以下のように上限を設ける条項に変えるのも一つの手です。
本契約を解除された当事者は、解除した当事者が解除により被った損害を賠償するものとする。
ただし、損害賠償額は、委託料金相当額を上限とする。
委託料金を上限に設定することで賠償リスクを限定できます。
中途解除の条件
どういう状況が発生したら中途解除できるかの、条件の設定です。
私が作った中途解除条項では、催告解除と無催告解除の要件について大まかに規定しています。
1. 委託者又は受託者は、相手方に1ヶ月前までに書面をもって通知することにより、本契約を解除することができる。なお、委託者は、解除により受託者に損害が生じた場合でも、その賠償責任を負わない。
2. 委託者又は受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、催告その他の手続きを要しないで、直ちに本契約を解除することができる。
(1) 本契約に定められた条項に違反したとき
(2) 本契約に定められた債務の履行をしないとき、又は債務の履行が困難であることが明らかなとき
(3) 相手方に対する詐術その他背信的行為があったとき
これ以外の条件をつけるとしたら以下が考えられます。
・ 相手が破産、あるいはそれに準ずる状態になった
・ 相手が反社会勢力だった
・ 相手が営業につき行政庁から取り消し、または停止の処分を受けた
条件を仔細に設定しておけば、それだけ解除権の行使がしやすくなります。
報酬額の取り扱い
業務委託契約において、委託者が途中で契約を解除した場合、受託者に支払う報酬をどうするのかという問題が発生します。
紛争に発展しないよう、報酬をどうするかについてはしっかり規定しておいた方がいいでしょう。
中途解約した場合の報酬については以下が考えられます。
・一切報酬が発生しない
・解約月の報酬は全額発生する
・報酬を日割り計算する
紛争を避けるためにも、相手が仕事をした分の報酬はできるだけ支払うようにした方がいいでしょう。
おわりに
当行政書士事務所では業務委託契約書の作成を請け負っております。
適法な業務委託契約書の作成を望む場合はぜひご依頼お待ちしております!