業務委託契約で遅延損害金を定める場合、おおむね14.6%の利率が設定されます。
では、遅延損害金の利率の上限は14.6%なのでしょうか?

本記事ではそんな遅延損害金について解説します。

遅延損害金とは?

遅延損害金とは債務不履行が発生した場合にペナルティとして課される利息です。
遅延損害金は延滞利息とも呼ばれますが、実態は利息とは似て非なる性質のものです。

利息は貸し付けた金銭等などに利率を設定し、借主は元本とその利息を支払います。これが利息。

他方、遅延損害金は、債務不履行が発生した場合に生じるペナルティ的な性質を持つので、利息とは意味合いが大きく異なるのです。

業務委託契約においては、一方当事者に債務不履行が発生した場合(業務を期日までに供給しない等)、その債務不履行の日から遅延損害金が発生します。

実務上、多くの契約書においては遅延損害金は14.6%で設定されています。

遅延損害金が14.6%で設定される根拠

ではなぜ多くの契約書において遅延損害金が14.6%で設定されているのか。

これには確固たる理由は特にありません。
遅延損害金の上限が一律14.6%というわけでもありません。

にもかかわらず利率が14.6%で設定されている理由は、消費者契約法が関係していると思われます。

消費者契約法には利率について次のような規定があります。

第九条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの当該超える部分
※一部省略

消費者契約法は、事業者と消費者の契約において、弱い立場になりやすい消費者を守るための法律です。
その消費者契約法においては、違約金等の額が年14.6%を超える部分を無効としているのです。

契約実務の現場においては、おそらくこの消費者契約法の数字に依拠して、半ば商習慣的に遅延損害金を14.6%と設定されているのだと推測されます。

したがって、必ずしも遅延損害金は14.6%で設定しなければいけないわけではありません。

遅延損害金の上限はあるのか

遅延損害金に上限はあるのか。
結論、明確な上限はありません。

当事者が合意した数字が遅延損害金の利率になります。
遅延損害金15%で合意すればそれが利率になります。

だからといって不当に高い利率を設定すると、相手との信頼関係にヒビが入る可能性があるので、互いに合意できる一般的な数値を設定しておくべきでしょう。

さらに、不当に高い遅延損害金を設定すると(例えば年80%など)、民法90条の公序良俗に反して、裁判で利率が無効になる可能性があります。やはり常識的な数値を設定すべき。

なお、契約書で遅延損害金の利率を設定しなかった場合は法定利率によります。
法定利率は民法第404条2項で規定されており年3%。
(民法改正前は5%)

したがって契約書で遅延損害金の利率を定めなかったときは、法定利率の3%が適用となります。

利息制限法と消費者契約法に抵触しないように

遅延損害金に明確な上限はありません。

もっとも、利息制限法と消費者契約法には上限利率が設定されているので、それを超える部分は無効となります。

先ほども書いたとおり、消費者契約法においては遅延損害金の上限は14.6%まで。
あなたが事業者で取引相手が消費者の場合、消費者契約法が適用されるのでご注意ください。

次に利息制限法。
利息制限法の定める上限金利は次のとおり。

元本額上限金利
10万円未満年20%
10万円以上100万円未満年18%
100万円以上年15%

利息制限法はお金の貸し借りについて規定する法律です。
金銭消費貸借等でお金の貸し借りをする契約を結んだ場合、利息制限法の対象になります。

まとめ

本記事のまとめは以下。

・遅延損害金に明確な上限はなし
・だからといって不当に高い利率を設定していいわけでもなし
・利息制限法と消費者契約法には注意

当事務所では業務委託契約書の作成、またはリーガルチェック等を得意としています。
契約書関係でお困りの方はぜひお問合せフォームからご連絡ください。