お恥ずかしながら、私が以前ブロガーとして活動してた頃の記事を振り返ると、「時」と「とき」の使い分けが全くできていないことに気がつきました。
実は法的には「時」と「とき」は違う意味があります。
契約書専門の行政書士が「時」と「とき」の違いを解説します。
法律上の「時」と「とき」の違い
「とき」は仮定的条件を表し、「場合」と同じ意味で使われます。
契約書の例だと、「相手が本契約の条項に一つでも違反したときは、催告を要しないで契約を解除することができる」など。
これは契約の条項に違反した場合という意味ですね。
もっとも、法律の条文では「とき」と「場合」が両方出てくることがあります。
例えば民法607条。
民法第607条(賃借人の意思に反する保存行為)
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
同じ意味なら同じ言葉を使えばいいのに、と思うかもしれませんが、実はこれにも理由があります。
仮定的条件が重なるときは、大きい仮定条件の方に「場合」を使い、小さい仮定条件に「とき」を使うのです。
次に「時」の解説。
これは単純で、「時」とは「時点」を示します。
例えば深夜3時を「丑三つ時」といいます。
これは、深夜3時という時点を示すから「時」を使っているのです。
法律の条文だと民法125条がいい例でしょう。
民法第125条(法定追認)
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
追認することができる「時」以後とは、まさしく時点を示しており、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があった「とき」は、まさに場面を示しています。
これが「時」と「とき」の法律的な違い。
時は時点、ときは場面です。
おわりに
ちょっとした文言の違いで解釈に紛争が生じるのが契約書の作成です。
こうした、「時」や「とき」の使い分けには十分注意しましょう。
当事務所では、契約書作成を請け負っていますので、何か契約書関連でお困りのことがあればお気軽にご相談ください。