賃貸借契約の実務でペット禁止条項は多く設けられています。
しかし、いざペット禁止で契約したのに、入居者が隠れてペットを飼っていた場合、どうすればいいのでしょうか。
契約書作成専門の行政書士が解説します。
ペット禁止条項は退去の正当事由になり得るか
賃貸借契約にて次のようなペット禁止条項を設けたとします。
第◯条
乙は、甲の書面による承諾がない限り、犬、猫、鳥、爬虫類、その他愛玩動物または家畜に類する一切の動物を居室内で飼育または保管してはならない。
にもかかわらず、入居者が犬を飼っていることが発覚。
単純に考えて、これは借主の契約違反ですから、即座に退去をさせられそうですが、借地借家法は借主の権利を強く保護しているので、そう簡単には退去させられません。
退去させるには正当事由が必要になるのと、貸主と借主の信頼関係が完全に破壊されてると認められることが条件です。
これを法律用語で信頼関係破壊の法理といい、信頼関係破壊の法理とは、仮に契約違反があったとしても、その契約違反が信頼関係が破壊されたと認められない限り、契約の解除は認めないというルールです。
ペット禁止なのにペットを飼っていることが信頼関係の破壊に繋がったといえるかどうかは、裁判所は個別具体的に判断するので、一概にペット禁止の契約を破ったからといって即退去させられるかはわかりません。
まずは入居者と話し合うことをおすすめします。
いきなり退去通知を送ると、それこそ裁判でガチンコに争う羽目になるので、まずは話し合いをして妥協点を探るといいでしょう。
ペット禁止なのにペットを飼っていたら損害賠償請求はできるか
退去を迫るのは難しくても損害賠償請求はできる可能性があります。
なぜなら、禁止されているペットを飼育してたことによって、貸主に損害が発生してるなら、損害賠償請求を認めるのが法律的な観点からみて公平だからです。
契約違反に基づく損害賠償請求(民法415条)
賃貸借契約でペット禁止とされているにも関わらず、借主がペットを飼育した場合それは契約違反。
契約違反によって貸主に損害が発生した場合、貸主は借主に対して損害賠償を請求できます。
不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
借主のペット飼育によって、貸主の所有物(建物など)が損傷した場合、貸主は借主に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます。
損害賠償請求が認められる想定ケースは以下。
・壁や床の傷、ペットの臭いによる染み付きなど、ペットの飼育によって建物に損害が発生した場合、原状回復費用や損害賠償金を請求できる
・ペットの鳴き声や臭いによって近隣住民に損害が発生した場合
・ペットの飼育によって物件の価値が低下した場合(物件の一部が壊れたり汚損したりなど)
論点は現実に損害が発生していること。
現実に損害が発生していれば損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。
ただし損害の証明をする必要があり
損害賠償請求をするには、ペット飼育によってどれだけの損害が発生したのかを貸主側で証明する必要があります。
主観に基づく評価ではなく、できるだけ客観的に損害額を見積らないといけないので、場合によっては弁護士らと相談する必要があります。
おわりに
当事務所は契約書作成専門の行政書士事務所なので、賃貸借契約書の作成も承っております。
ペット禁止条項や、損害賠償などの細かい規定でお悩みならぜひご相談ください。