賃貸借契約を結ぶ場合、何気に大事なのが造作買取請求権を排除する特約について。
本記事では具体例も交えて造作買取請求権の排除特約について解説します。
造作買取請求権とは
知ってる方はこの項をスキップしてください。
造作買取請求権とは、賃借人が賃貸に許可を得て賃貸物件に付加した「造作」を、賃貸借契約終了時に賃貸人に買い取ってもらえる権利のことです。
借地借家法33条に規定されている賃借人の正当な権利となります。
第三十三条 (造作買取請求権)
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
当たり前ですが、賃借人が勝手に付加した造作を買い取ってもらえるわけではなく、あくまで賃貸人に許可を得て付加した造作のみが買取請求権の対象となります。
造作物の対象物となるのは、例えば以下。
・造り付けの棚や収納
・電気・ガス・水道などの設備
・エアコン(取り付け工事を伴うもの)
・シャワー設備
・空調設備
この中で一番一般的なのはエアコンでしょうか。
私の例で話すと、私は昔格安のアパートに住んでいたことがあります。
格安アパートらしく、当然部屋にはエアコンなどという文明の利器はなく、真夏は部屋の気温が40度を超える有様でした。
そんな折りに、一つ上の階のおじいさんからエアコンを無償で譲り受け、部屋にエアコンを付加しました。
このエアコンは造作買取請求権でいうところの付加した造作物にあたりますので、アパートを解約する時に大家さんから、「このエアコンどうしますか?」と聞かれ、何も知識がなかった私は、「いいっすいいっすもらってください」と無償譲渡しました。
今考えれば、造作買取請求権を行使して、時価で買取を要求できたのかもしれませんね。
ともかく、これが造作買取請求権。何となくイメージはつきましたでしょうか。
造作買取請求権排除特約について
造作買取請求権は賃貸人にとって負担が重い上に、あまり実態に則さないルールです。
それゆえ、多くの賃貸借契約書では造作買取請求権を排除する特約をつけています。
借地借家法33条が規定する造作買取請求権は、強行規定ではないので、造作買取請求権排除条項も有効となります。
条項例は以下。
第◯条 造作買取請求権等
賃借人は、本物件に付加した造作がある場合でも、賃貸借契約の終了時に賃貸人に対し、当該造作の買取請求を一切行わないものとする。
こうした条項を設けておくことで、賃借人の造作買取請求権を放棄させることができ、思わぬ出費を強いられることがなくなります。
造作にあたらないもの
造作にあたらないものについても解説しておきます。
私は先ほど以下が造作の具体例だと言いました。
・造り付けの棚や収納
・電気・ガス・水道などの設備
・エアコン(取り付け工事を伴うもの)
・シャワー設備
・空調設備
しかし、例えばソファー等の家具は、造作にあたるかというとあたりません。
なぜならソファーは独立性が強く、建物と付加一体になってるわけではないからです。
借地借家法33条がいう造作とは「建物に付加」されていることが条件となるため、独立性が強い物は造作とは言えないのです。
借地借家法33条では、畳や建具などが造作の例として挙げられていますが、独立性の観点からこれらは造作というには実情にそぐわないです。
エアコンが造作物として認められるのも、部屋に付加したものだから。
なので、工事不要で使える移動式のスポットクーラーなどは造作物にあたりません。
建物に付加してるかどうか、その点を重要視して造作物かどうかを判断してみてください。
おわりに
日本の法律の多くはかなり昔に作られたもので、賃貸借契約の基礎となる借地借家法も30年以上前に作られた法律です。
それゆえ、現在の慣習などには馴染まない法律も多数あり、造作買取請求権もその一つなんじゃないかなと私は思います。
当行政書士事務所では契約書作成を請け負っていますので、契約書関係でお悩みの方はお気軽にご相談ください。