結論、表題のとおり定期建物賃貸借契約は必ずしも公正証書で作成する必要はありません。
詳細を解説します。
定期建物賃貸借契約は公正証書である必要なし
定期建物賃貸借契約が公正証書で作成しなければいけないという誤解が生じているのは、借地借家法38条1項の条文があるからです。
第三十八条
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
紛らわしいのですが、38条のいう公正証書はあくまで例示であって、書面に記載され両当事者の押印があれば普通の契約書の形式で何ら問題ありません。
なので別に定期建物賃貸借契約を、必ず公正証書で作成する必要はなし。
もちろん、公正証書で作成すること自体は問題ありません。
公正証書が必要なのは事業用定期借地権契約です
事業用定期借地契約とは、その名のとおり事業のために土地を借りる契約のことを指します。
公正証書での作成を必要としているのがこの事業用定期借地契約です。
以下は借地借家法第23条の条文。
第二十三条
専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
事業用定期借地契約なのに公正証書ではなく普通の契約書で契約してしまうと、普通借地契約と判断されてしまいますのでご注意ください。
定期建物賃貸借契約を公正証書で作成するメリット
定期建物賃貸借契約を公正証書で作成することは必須ではありませんが、あえて公正証書で作成することにはいくつかのメリットがあります。
1. 契約内容の明確化と証拠力の強化
・ 公正証書は、公証人が契約内容を確認し、作成する公文書です。そのため、契約内容が明確になり、後日の紛争防止に役立ちます。
・ 公正証書は、裁判においても強力な証拠力を持つため、契約内容に関する争いが起こった際に有利な立場を確保できます。
2. 強制執行認諾文言の付与
・ 公正証書には、強制執行認諾文言を付与することができます。これにより、賃料の滞納や契約違反があった場合に、裁判所の判決を経ずに強制執行(例:建物の明け渡し、賃料の差し押さえ)を行うことが可能になります。
これは、賃貸人にとって大きなメリットとなります。
3. 契約の確実性向上
・ 公正証書を作成する際には、当事者双方の本人確認が行われます。これにより、契約の当事者が確実に本人であることを確認でき、契約の有効性を高めることができます。
4. 心理的な抑止力
・ 公正証書を作成することは、当事者双方にとって心理的な抑止力となり、契約違反を未然に防ぐ効果が期待できます。
ただし、公正証書で作成するには、以下の点に注意が必要です。
- 費用: 公証役場に手数料を支払う必要があります。
- 手間: 公証役場での手続きが必要になります。
おわりに
法律の条文はとにかく読みにくい。
私も行政書士の勉強を始めたばかりの頃は、法律文書独特の言い回しに辟易したものです。
法律条文の解釈を間違えてしまわないよう、疑問を感じたら必ず確認するようにしてください。
ではでは。